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ムクウェゲ医師の新著『Power of Women』の書評全文和訳

2021年11月に出版されたムクウェゲ医師の新著『The Power of Women: A Doctor’s Journey of Hope and Healing(女性のパワー:ある医師の希望と癒しの旅)』(Flatiron Books 2021)の書評が学術雑誌『Human Rights Quarterly』(Johns Hopkins University Press)に掲載されました。RITA-Congoでは、執筆者のヘレン・エプスティン氏と出版社の許可を得て書評を全文和訳しました。

アメリカ政府をはじめとする国際社会の思惑を知ることにより、ムクウェゲ医師の活動が直面しているさまざまな苦境やコンゴ東部紛争の全体図について理解を深める手掛かりになります。ぜひご一読ください。


<<Human Rights Quarterly, Volume 44, Number 2, May 2022, pp. 441-445に掲載されたHelen Epsteinによる書評の全文和訳>>


書評 Book Reviews

Denis Mukwege, The Power of Women: A Doctor’s Journey of Hope and Healing

(Flatiron Books 2021)ISBN 9781250769, 320 ページ

(デニ・ムクウェゲ著『女性のパワー:ある医師の希望と癒しの旅』(仮訳))


デニ・ムクウェゲは、医者という職業があると知ったとき、自分がなりたいものはこれだとすぐにわかった。高校卒業後、母国コンゴで当時わずかしかなかった医学課程に出願したものの、不合格となった。後に母親が隣国ブルンジに医科大学が新設されたことを知る。ムクウェゲは出願して入学し、1983年に卒業した。故郷ブカヴに近いレメラ病院でしばらく働いた後、フランスにわたって婦人科・産科専門医として教育を受けた。1989年に帰国してレメラ病院の経営を担う。おりしも中部アフリカが、略奪、殺戮と性暴力の地獄に落ちようとしていた時期である。


30年余にわたり、ムクウェゲ医師はこのすさまじい惨禍の被害者を治療し続けた。自宅で兵士に集団レイプされたり、薪や水を探しに行っている時に襲われたり、軍の収容所にさらわれてヤギのようにつながれ、何か月も民兵たちにレイプされ続けた女性など、その数は6万人を超える。2000年、ムクウェゲ医師はブカヴにパンジ総合病院を設立した。性暴力サバイバーのための医療ケア、法的支援や心理カウンセリングの他に、洋服の仕立て、石鹸づくりなど手仕事で小ビジネスを営む訓練も提供している。さらに何らかの理由で地元に戻れない女性のための居住プログラムも用意している。その上、パンジは、コミュニティー保健ワーカーのプログラムや、男性性およびレイプが長年与える汚名に関する規範に疑問を持つための公教育キャンペーンも運営している。ムクウェゲ医師は女性の権利を訴える国際的運動にも参加し、国連で性暴力について演説をし、2018年のノーベル平和賞を含めて人権に関する賞をすべて受賞している。


パンジ病院にいるサバイバーの多くは、ジャーナリストをはじめ、耳を傾けてくれる相手なら誰にでも包み隠さず自分の体験を語る。そのサバイバーの体験は衝撃的で、彼女らの勇気は信じられないほどである。この種の話にうんざりしている評者(私)ですら、読んでいて涙を流さずにいられない。上級外交官もこの女性たちの前ではただ沈黙する。コンゴ軍のある陸軍大将は筋肉もりもりの大柄なのだが、12歳の少女ウィチュラが残忍な民兵から受けたつらい体験を話した時に気を失った…。


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翻訳:牟礼晶子、監修:米川正子

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