知ってほしいムクウェゲさん 日本につながるコンゴ紛争(朝日新聞)
2018年12月4日配信
ノーベル平和賞授賞式が10日にオスロで開かれる。これを機に、今年の受賞者の一人、アフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)の医師で人権活動家のデニ・ムクウェゲさんのことを日本でも知ってもらおうと、ドキュメンタリー映画の上映が広まっている。
映画は「女を修理する男」(2015年、ベルギー)。内戦状態が続くコンゴ民主共和国で、自身も命の危険にさらされながら、数万人の戦時性暴力被害者を治療してきたムクウェゲさんに密着する。被害者の証言、立ち上がる女性たちの姿も描く。性暴力が組織的に行われ、多くの人たちを恐怖に陥れて支配下に置くための「武器」となっている実態を告発する。
日本では広くは知られていないコンゴ紛争の経緯をたどり、紛争の背景には豊富な鉱物資源をめぐる利権があることも描き出す。そうした鉱物は携帯電話やパソコン、自動車、航空機といった電子機器や工業製品に幅広く使われている。
福岡市の配給会社「ユナイテッドピープル」の関根健次社長は「見続けるのが苦しい現実が映し出されるが、遠い国の出来事ではなく、私たちともつながっているんです」と話す。
日本語字幕版は、研究者や学生らでつくる「コンゴの性暴力と紛争を考える会」(代表=米川正子・立教大特定課題研究員)が映画制作会社と交渉。クラウドファンディング(CF)で資金を集めてつくった。
16年度に全国28カ所で上映し、約3千人が見た。「授業で見せたい」といった声が上がり、再びCFで資金を集め、「ユナイテッドピープル」の協力で今春、DVD化した。
同社によると、ノーベル賞発表後に問い合わせが増え、12月末までに東京や神戸、福岡など約30カ所で上映される予定。ホールや学校のほか、カフェや会議室などを「ミニシアター」に見立てた「市民上映会」も広まっている。
市民上映会は「近くに映画館がないが、見たい」「見せたい」という映画を、市民の手で上映する試みだ。プロジェクターなどの機材があれば、少人数でも開催できる。同社は09年から実施し、平和や環境、人権をテーマにしたドキュメンタリーを中心に約4500回、開いてきた。
上映会の準備や開催を通じて新しい仲間と出会えるのも魅力のひとつ。関根さんは、上映後に参加者同士で感想を話し合うことを勧めている。「『私に何ができるか』『何かをしよう』と自ら考え、行動するきっかけづくりになれば」
上映会の予定や開催方法の詳細、問い合わせなどはホームページ(https://www.cinemo.info/movie_detail.html?ck=58)から。(佐々木亮)